
人手や設備を増やす前に、すでにある資源を一緒に使えないか。地域のサービスを続けていくうえで、そんな視点が新しい選択肢になります。八戸市で始まった介護事業所の共同送迎の実証は、法人の境界を越えて、日々の業務を組み直す取り組みです。
発表された取り組み
ソーシャルムーバー株式会社は2026年11月5日、八戸市の3つの介護事業所が送迎車両を共同運用する実証について発表しました。公表内容では、実証期間は2026年10月29日から2027年1月29日まで。約15名、車両1〜2台の規模で、配車や運行の調整を行います。
2027年度以降の本格化は検討段階です。コスト削減などは実証で確かめる対象であり、すでに成果が確定したという発表ではありません。まず限られた規模で試し、継続できる条件を探る点に注目したいと思います。
出典:ソーシャルムーバー株式会社の発表(PR TIMES、2026年11月5日11:00)
ここからは、業務改善への考察
車両を共同で使うには、空いている車を見つけるだけでなく、乗車時刻や行き先、利用者への配慮、予定が変わったときの対応まで、関係者の間でそろえる必要があります。共同化の価値は、設備を共有することと、それを動かす情報を整えることの両方から生まれるのではないでしょうか。
これは、企業のIT運用にも通じます。部署ごとに持っている機器や会議室、問い合わせ窓口なども、利用状況が見えなければ、余力があっても活用できません。まず「何が、いつ、どの条件で使えるか」を整理すると、追加購入以外の方法を検討しやすくなります。
共通にする情報と、共有しない情報を分ける
共同運用では、全員が同じ情報を見られればよいとは限りません。業務に必要な予定と、個人に関する詳しい情報では、共有する相手や範囲を分けることが大切です。
例えば、運用に必要な項目を先に決め、更新する担当者、変更を確定する人、確認する場所をそろえる。急な変更は誰に伝え、どの記録を正しいものとするのかも決めておく。仕組みを導入する前に、この流れを確認するだけでも、調整で迷う場面を見つけられます。
小さく試し、負担も含めて測る
共同化を評価するときは、費用だけでなく、新たに増えた調整作業にも目を向けたいところです。移動や待機にかかる時間、担当者同士の連絡、予定変更への対応などを記録すれば、どこに改善の余地があるかを考えられます。
利用する人の安心や、現場の安全を保てているかも欠かせません。数字が良くなっていても、特定の担当者だけに負担が偏っていないかを確かめる必要があります。
これらは今回の実証結果ではなく、共同運用を考える際の一般的な視点です。八戸市での実証がどのような結果につながるかは、今後の公表を待つ必要があります。
一つの業務から、連携の可能性を探す
地域や組織の中にある資源を生かすには、それぞれの現場が無理なく協力できる形をつくることが大切です。最初から全体を変えるのではなく、一つの業務を選び、必要な情報と役割を整理して試す。その積み重ねが、限られた人手や設備を生かす選択肢を広げていきます。



