
注文を受け、在庫を確認し、商品を送り出す。普段はひと続きに見える仕事も、画面が開かなくなるだけで、どこから手をつければよいか分からなくなることがあります。物流のデジタル化を考えるとき、処理速度と同じくらい確認したいのが、システムを使えない時間の過ごし方です。
物流を止める要因をまとめて点検するサービス
ロジエンスコンサルティングは2026年11月4日、「物流BCP診断」の提供開始を発表しました。同社によると、サイバー攻撃、自然災害、車両事故、コンプライアンス違反、人材不足を対象に、予防・復旧・代替運用の体制を評価します。倉庫や輸配送、委託先との連携まで確認し、改善の優先順位や担当、期限を整理する内容です。発表原文
ここからは、この発表をきっかけに考えたい実務上の論点です。
「復旧するまで待つ」以外の選択肢を持つ
例えば、受注システムが使えなくなった場面を想像してみます。商品も作業員もそろっているのに、送り先や数量を確認できなければ、出荷には進めません。一方で、確認できないまま発送すれば、誤配送や二重出荷を招くおそれがあります。
そこで必要になるのは、非常時にも続ける仕事の範囲を決めることです。確認済みの注文だけを対象にするのか、どの顧客への供給を優先するのか。誰が判断し、どの時点で作業を止めるのか。こうした線引きを、現場任せにしない準備が求められます。
紙の手順にも、データの扱いにも設計が要る
代替手段として紙の伝票を用意しても、必要な情報が停止したシステムの中にしかなければ使えません。逆に、顧客情報を大量に持ち出して保管すれば、別の管理リスクが生まれます。
非常時に必要な情報を絞り、参照できる人と保管場所、更新方法を決める。そのうえで、通常のシステムに戻った際に、仮の記録と正式な記録をどう突き合わせるかまで考えることが大切です。復旧直後の二重処理を防ぐところまで含めて、代替運用といえます。
取引先と一緒に確かめる
自社のシステムが動いていても、委託先の倉庫や配送会社が動けなければ、商品は届きません。連絡先の一覧だけでなく、通常の連絡手段が使えない場合の窓口や、代替拠点へ切り替える条件も話し合っておきたい点です。
その確認は、短い机上訓練から始められます。「朝の出荷前に受注画面が開かない」という一つの場面を置き、各担当者が次に何をするかを順番に説明する。答えが止まる箇所は、手順や権限、情報の不足を見直す手がかりになります。
効率化と、続けられる仕事を一緒に考える
物流DXで日々の処理が速くなるほど、例外が起きたときの判断は見えにくくなりがちです。新しい仕組みを導入するときには、正常に動く日の操作とあわせて、使えない日の仕事も確認したいところです。
まずは一つの出荷業務を選び、停止から再開までを追ってみる。その小さな確認が、システムと現場の間に残った抜けを見つける出発点になります。
※サービス概要は発表企業の公表内容に基づきます。後半の実務上の論点は独自考察であり、当該サービスの評価・利用実績を示すものではありません。



