
生成AIを導入したものの、日常の仕事では使われていない。そんな状況を避けるには、利用者が普段どの画面で迷い、どこで確認に時間を使っているかに目を向けることが大切です。自治体の財務会計業務で行われた実証は、企業の業務改善を考えるうえでも参考になります。
発表された成果と、数字の読み方
テックタッチは2026年10月21日、磐田市との生成AI実証の結果を公表しました。同社発表によると、2026年4〜6月の試行では、支払遅延に伴う返戻が月平均21件から7件へ減少。複数の改善を合わせ、年間590.4時間相当の業務時間削減に換算しています。
この590.4時間は、1年間を通して測定した削減実績ではありません。また、特定の業務・環境での結果であり、他の企業に導入しても同じ効果が出るとは限りません。自社で検討するときは、数字の大きさだけでなく、対象業務や測定条件を確かめる必要があります。
自社で考えたい三つの設計
ここからは、この事例を踏まえた考察です。
一つ目は、AIを使う場所を業務の流れに合わせることです。例えば、申請書を作る担当者が別の画面を開き、必要な情報を何度もコピーする運用では、確認そのものが負担になりかねません。入力画面や確認工程に支援を置けるかを検討し、まずは一つの作業で使い勝手を確かめると、改善点を見つけやすくなります。
二つ目は、人が判断する範囲を先に決めることです。同社の発表では、最終判断と例外処理は職員が担っています。企業でも、AIの提案を採用する担当者、判断に迷った際の相談先、確認記録の残し方を決めておくと、責任の所在が曖昧になることを防げます。AIが参照する業務ルールの更新担当も、あわせて決めたいところです。
三つ目は、効果と負担を同じように測ることです。実証では、AIの待ち時間や機能理解の不足、判定ロジックの修正といった課題も報告されています。自社で試す際には、処理時間だけでなく、差し戻し件数、利用率、人による修正の手間も記録すると、続けるべき改善が見えてきます。
小さな検証から、使い続けられる仕組みへ
最初から全業務への展開を目指す必要はありません。「確認漏れが多い」「問い合わせが集中する」など、困りごとが明確な工程を選び、導入前の状態と比較することが出発点になります。
XEROTTAのIT支援や業務改善という視点でも、注目したいのはAIの導入そのものより、既存の業務に無理なく組み込み、利用者の声を受けて改善できる運用です。現場で何が変わったかを確かめながら進めることが、継続的な活用につながると考えます。



