採用に関わるほど、「経歴は申し分ないのに、チームとかみ合わない」「入社後に力を発揮する人は、面接のここが違った」という場面に出会います。現場で得た視点をまとめます。
1. 動機の「矢印」がどこを向いているか
仕事の場面で、人の関心は大きく二つに分かれると感じます。
- 成果の方向:プロジェクトやお客様の課題が前に進むことが最優先
- 立場の方向:組織内での自分の評価や居場所を示すことが最優先
どちらが良い悪いではありません。ただ、会議で課題を整理する場面で、「前に進めるための議論」より「自分の見せ場づくり」が先に立つと、チームの推進力は落ちます。特に中途入社の方は、早く成果を示したい気持ちが自然に強く出ます。だからこそ、面接では次のように確認します。
- 「前職で最も成果を出したプロジェクトで、あなたの役割は何でしたか」
- 「意見が対立したとき、どう着地させましたか」
- 「自分の案が採用されなかった経験と、その後の動き方を教えてください」
答えの中で、主語が「チーム・お客様」なのか「自分の評価」なのか、結論に向かう姿勢があるかを見ます。
2. 「話の辻褄」は最も信頼できるシグナル
面接で重視しているのは、話の一貫性です。
- 退職理由と志望動機がつながっているか
- 実績の数字や役割を、深掘りしても同じ内容で説明できるか
- 質問が変わっても、価値観がぶれないか
感情に訴える話や、印象的なフレーズが続く話ほど、細部を聞くと筋が通らないことがあります。疑うためではなく、実像を理解するために、具体的なエピソードを三段階掘り下げます(何を、なぜ、その結果どうなったか)。
3. 「転職理由」で決めつけない
転職の背景はさまざまです。ステップアップのための前向きな転職もあれば、環境が合わず悩んだ末の転職もあります。後者を否定的に見ると、本来活躍できる人を逃しかねません。
見るべきは理由そのものではなく、振り返り方です。
- 他責だけで終わっていないか
- 学びを言葉にできているか
- 次の環境で何を変えたいかが具体的か
4. 「嫌われたくない採用」を避ける
採用担当が陥りがちなのが、候補者にも現場にも良い顔をしたいという心理です。
- 懸念点を曖昧にしたまま通過させる
- 現場の不安を「入ってみれば大丈夫」と流す
- 入社前の期待値調整を省く
その場の気まずさは避けられても、入社後のミスマッチは確実に大きくなります。厳しい懸念を面接官同士で率直に共有し、基準に照らして判断する。これが双方に誠実な採用だと考えています。
5. 「手厚さ」と「定着」は比例しない
どれだけ丁寧にフォローしても、辞める人は辞めます。これは採用の失敗とは限りません。大切なのは、次の点です。
- 入社前に、仕事の実態(良い面も大変な面も)を正直に伝えたか
- 期待する役割と評価基準を、言葉で合意していたか
- 退職の理由から、採用基準や受け入れ体制を見直したか
個人の努力で引き留めるよりも、仕組みで再現性を上げるほうが、結果的に全員のためになります。
6. 実践チェックリスト
- 面接の質問は「役割・判断・結果・学び」で構造化する
- 主語(チームか自分か)と結論への姿勢をメモする
- 同じ内容を別の角度から二度聞き、一貫性を確認する
- 懸念点は面接官全員で言語化し、基準に照らして判断する
- 入社前に、期待役割・評価基準・大変な面を明示する
- 退職理由を定期的に振り返り、採用基準へ反映する
まとめ
採用は、能力の査定ではなく、方向性と期待値のすり合わせです。成果を向いているか、話は一貫しているか、そして私たち自身が基準を持って誠実に向き合えているか。この三つを問い続けることが、結果として強いチームづくりにつながると考えています。



