鹿児島県南九州市視察

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南九州市視察レポート 〜リージョナル・イノベーションの可能性を探る旅〜

先日、リージョナル・イノベーション事業の一環として、鹿児島県の南九州市を訪れる機会をいただきました。3日間の視察の中で、地域の文化・歴史・産業に触れ、そこに暮らす人々の柔軟さや挑戦心を肌で感じることができました。本ブログでは、その内容を振り返りたいと思います。

 

【1日目:知覧から始まる視察】

南九州市に到着して最初に訪れたのは、知覧にあるコワーキングスペース。非常に綺麗に整備された空間で、デザイン性や設備も申し分ない環境でした。しかし、平日にもかかわらず利用者がほとんどいない状況に、どこか「空虚さ」のようなものを感じました。都市圏であれば需要が見込める施設も、地域の特性によっては浸透が難しいのかもしれません。

その後、知覧特攻平和会館を訪問。ここは何度訪れても「かつて日本にこうした時代があったのか」と胸を締め付けられる思いになります。命を捧げた若者たちの手紙や遺品に触れるたび、平和の尊さと次世代に伝え続ける責任を改めて実感します。

夜は、南九州市の行政担当者や参加企業の方々と会食。意外だったのは、南九州市が他地域に比べてDX推進に積極的であること。その背景には、地域内に2人のキーマンが存在し、強いリーダーシップで変革を先導しているという事実がありました。DXは「推進する側の強い意志」と「受け入れる側の柔軟さ」が揃って初めて成果に結びつくもの。南九州市はまさにその両輪が噛み合った稀有な地域であると感じました。

 

【2日目:地域の挑戦と可能性を学ぶ】

2日目は、地域の起業家や団体を中心に訪問しました。

まず、元ニトリ社員が南九州市で立ち上げたNPO法人を訪問。空き家問題や地域活性化に向けた取り組みについて伺いました。印象的だったのは、パンフレットやWebサイトを活用した情報発信がしっかりと進められていたこと。地域課題の解決と広報力の両立は、他地域にとっても参考になる事例です。

次に、東京で建築設計に携わっていた方が設立した社団法人を訪問。自然公園の整備や環境保護、観光資源化の取り組みを学びました。特に印象的だったのは、タツノオトシゴの養殖事業。九州最南端の豊かな海を舞台に、観光と環境保護を両立させる可能性を感じました。日本を深く知りたい観光客にとって、こうした未開拓の地は大きな魅力になると強く実感しました。

続いて、知覧の酒造会社を訪問。伝統的な焼酎の製造工程を学ぶ一方で、日本酒やウイスキーが海外で人気を博しているのに比べ、焼酎がなかなか広がっていない現状を知りました。アルコール市場全般が健康志向の高まりで縮小傾向にある中、次の一手は何か?業界全体が模索すべき課題を突きつけられた思いでした。

その後、知覧茶の製造会社を訪問。茶道用の茶葉と、抹茶スイーツなどで使われる茶葉は別工程で作られることを知り、製造現場ならではの知恵に驚かされました。需要が供給を上回る状況の中、日本が「長寿の国」として世界に認識されている背景には、こうした健康志向とお茶文化が深く関わっているのだと改めて感じました。

さらに、野菜農家でありながらOEM提供や加工事業にも挑戦している農家を訪問。一つの得意分野を基盤にしつつ、付加価値を加えることで販路を拡大する姿勢は、まさにマーケティングの基本を体現する事例でした。行動力が新しい未来を切り開くのだという強いメッセージを受け取りました。

夜は急用のため公式の会食に参加できませんでしたが、南さつま市で地元の方々と夕食をご一緒する機会を得ました。84歳の女性から伺った戦時中の体験、防空壕の匂いの記憶は強烈で、今の若い世代にこそ伝えるべき「生きた歴史」だと思いました。初対面にもかかわらず焼酎をいただき、地域の温かさと懐の深さに触れ、東京との違いを実感しました。

 

【3日目:急な体調不良と帰路での学び】

3日目は、私自身が39度を超える発熱に見舞われ、急遽東京に戻ることとなりました。関係者の皆さまには大変ご迷惑をおかけしたこと、この場を借りてお詫び申し上げます。

鹿児島空港までの移動中、タクシー運転手の方から地域のリアルな話を伺うことができました。鹿児島でのコロナやインフルエンザの流行状況、人口減少や就職の現実、廃止されたバスに代わって展開される相乗りタクシーの話。体調不良の中でも、最後まで学びを得る機会となりました。

 

【今後のアクション】

東京に戻った後は、今回の視察を踏まえて以下の5つのタスクを推進し、計画を実行していきます。

  1. 南九州市におけるDX推進事例の調査・共有

  2. 空き家問題解決に向けた事例研究

  3. 地域特産品(茶・焼酎・野菜)のマーケティング戦略検討

  4. 観光資源としての自然環境活用の可能性調査

  5. 地域住民からの生活史ヒアリングの継続

南九州市は、一度の訪問だけでは語り尽くせない奥深さを持つ地域です。今後も継続的に足を運び、情報収集と実践を重ねていきたいと考えています。